衣類を出すのも受け取るのも宅配便で済ませられる「宅配クリーニング」。その手軽さ・便利さで、宅配クリーニングの利用者数は年々増加しています。
最近では、着物やドレス等を扱う宅配クリーニング店も登場するようになりました。「着物をクリーニングしたいけど、宅配クリーニングに出してみようかな」「でもやっぱり、専門店の方が安心?」と、迷っている人も多いのではないでしょうか。
ここでは着物のクリーニングに焦点をあてて、宅配クリーニングと専門店のどちらか良いのかを比較していきます。
- 1.着物を運ぶ「便利さ」は宅配クリーニング
- 2.「シミ抜き」「カビ取り」「水洗い」なら専門店
- 3.「スピード感」は宅配クリーニングの勝ち?
- 4.「高級着物」「伝統工芸品着物」は専門店が安心?
- 宅配型の着物クリーニング専門店を選ぶのも手!
- まとめ
1.着物を運ぶ「便利さ」は宅配クリーニング
畳んだ状態の着物は意外とかさ張るし、種類によっては重いものです。普段着着物であればある程度小さく畳めますが、大切な礼装用着物(留袖や振袖等)の場合にはあまり小さく畳むのはNG。シワを防ぐためにも「本だたみ」をして、それから多当紙(タトウ紙)などで包み、さらに風呂敷等で水平に持ち歩くことになります。
現在では着物の持ち歩き用の「着物バッグ」等も登場してはいますが、原則としては着物の持ち運びは「水平」に行うのが理想的です。そのため、実店舗型のクリーニング店に持ち運ぶのはかなりの手間となります。
特に悉皆屋や着物クリーニング・着物洗濯の専門店は店舗数が少ないため、着物を持っていくのもなかなか大変です。手間や時間を考えると、専門店に持っていくのが先になってしまう…という人も多いことでしょう。
その点、『宅配クリーニング』であれば持ち運びの手間を考える必要はありません。指定された袋やダンボール箱等に着物を入れて宅配便で送れば、クリーニング済の着物がタトウ紙に入れられて戻ってきます。
近くに専門店が無い人や忙しい人でも気軽に使えるという意味では、[宅配クリーニング」が大きく有利と言えるでしょう。
2.「シミ抜き」「カビ取り」「水洗い」なら専門店
洋服をメインに扱う宅配クリーニング店の場合だと、「着物OK」としていても、クリーニングのメニュー内容が決まっているケースが多いです。
基本的には「着物丸洗い」(溶剤を使った洗濯機洗い)しか受け付けていません。
これはなぜか?というと、洋服メインの宅配クリーニング店では、そもそも着物に対応した洗濯設備が無いため。まとめて依頼を受け付けて、別の着物専門のクリーニング業者に委託していることがほとんどなのです。そのため、あまり込み入ったメニューは受け付けていないのですね。
ちなみに着物が次のような状態の場合だと、一般的な「着物丸洗い」では対応ができないと考えた方が良いです。
●シミ汚れがある着物には「シミ抜き」が必要
飲み物のシミや化粧品のシミ、血液シミ等、なんらかの目立つ汚れがある場合に、基本的には別途「シミ抜き」が必要です。「着物丸洗い」は、全体的な皮脂汚れやホコリ汚れ等しか落とすことができません。
●カビが生えた・カビ臭い着物は「カビ取り」
一度カビが生えた着物は「カビ取り」をしない限り、何度もカビが生えてきます。またカビが見えなくても、カビ臭い場合にはすでにカビ菌が発生している状態です。これらの場合には、「カビ取り」という処理をする必要があります。
●状態によっては「洗い張り」
汚れやカビの状態によっては、一度着物をほどいて水洗いする「洗い張り(あらいはり)」という対応が必要になることもあります。
上記のような「シミ抜き」「カビ取り」「洗い張り」をオーダーする場合には、着物を専門に扱うお店の方が良いでしょう。
3.「スピード感」は宅配クリーニングの勝ち?
では着物のクリーニングを依頼してから出来上がるまでの日数・スピード感という観点では、宅配クリーニングと専門店はどちらが強いのでしょうか。
宅配クリーニングの場合、家から業者まで、また業者から家までの間を宅配便で荷物を往復させるため、どうしても数日間は日数がかかります。そのため、一見すると実店舗型の専門店の方が早く仕上げられるように思えますね。
ところが着物クリーニングの場合、必ずしも「実店舗が早い」とは言えないところがあります。専門店で着物を洗濯する場合、事前に専門のスタッフが着物をていねいに検品して、最適なメニューについての「見積もり」を出す必要があるためです。
反対に着物クリーニングメニューが「丸洗いのみ」の宅配クリーニングの場合、料金は一定ですし、見積もりやメニュー提案をする必要はありません。そのため早い業者であれば、数日程度でクリーニングが終了するケースもあります。
着物の汚れの状態やお店の込み具合等によっても変わりますが、「スピード感」という意味では宅配クリーニング店の方が最近ではやや有利と言えるかもしれません。
4.「高級着物」「伝統工芸品着物」は専門店が安心?
「着物」と一口に言っても、そこには様々な素材の違いやランクの違いがあります。洋服に「ワンピース」や「ドレス」があったり、ファストファッションに対してのハイブランドという価格帯の違いがあるのと同じです。
ごくカンタンにまとめると、「普段着着物」と「高級着物」は次のように分類できます。
・ウールの着物
・化学繊維の着物
・手軽な価格の小紋 等
・振袖・留袖・訪問着等の礼装着物(正絹の場合)
・喪服着物(正絹の場合)
・紬の着物
・絞りの着物
・その他伝統工芸品の着物
・作家作品 等
このうち「高級な着物」、中でも伝統工芸品や作家製品等の着物のクリーニングについては、着物クリーニングの実績のある専門店におまかせをすることをおすすめします。また「ここぞ!」という時に着る礼装用の着物も、できれば専門店の方が安心です。
宅配クリーニング店の中には、着物クリーニングの実績が浅かったり、扱いに慣れていない店舗があることも考えられます。衣類を取り扱うスタッフのすべてが着物の種類や染色・価値について理解している専門店の方が、リスクを最大限に減らせることでしょう。
宅配型の着物クリーニング専門店を選ぶのも手!
最近では次のような新しいタイプの「着物クリーニング」の業者が登場しています。
- 着物専門の宅配クリーニング
- 実店舗型の着物専門クリーニング(または悉皆屋)による宅配サービス
このようなお店の場合だと、持ち込みや受け取りは宅配便で済むという手軽さがありながら、着物洗の専門店ならではの技術力がある安心感があります。
「シミ抜き」はほとんどのお店で対応OKですし、「カビ取り」や「洗い張り」の他、サイズ直し・リペア等の問題にも対応する業者も登場するようになりました。いわば「宅配クリーニング」と「専門店」の良いとこ取りができるお店というわけです。
近隣に着物クリーニングの専門店がない、高級着物を預けられるお店が良い…という場合には、このような専門業者を選ぶのも手ではないでしょうか。
まとめ
着物のクリーニングで「宅配」が良いか「専門店」が良いかというのは、その着物の素材や状態等によっても変わるため、一概には言いにくいところです。しかしごくカンタンにまとめると、次のような点を目安とすると良いのではないでしょうか。
- 目立つ汚れがある → 専門店
- 汚れは特に無いがお手入れしておきたい → 宅配クリーニング
- カジュアルな着物やウール着物 → 宅配クリーニング
- 伝統工芸品や特殊加工がある着物 → 専門店
お手持ちの着物やその状態等に合わせて、ピッタリと合う着物クリーニングのお店を選びましょう。