「来週の花火大会に浴衣を着ようとクローゼットから浴衣を出して広げたら、なんだか浴衣にカビっぽいシミがある…」「久しぶりに出した浴衣が臭いんだけど、これってかび臭いってこと?」湿度の高い日本では、このような浴衣のカビのトラブルがとても多く起こりますね。
しかしとても多いトラブルである割に、浴衣のカビにどのように対処したら正解なのかを知っている人はあまりいません。浴衣のカビにまちがったシミ抜き等の対処をして、せっかくの浴衣がもう着られなくなってしまう…こんな結果になるのは困りますよね。
ここでは浴衣に生えたカビについて、よくある疑問をQ&A形式で解説していきます。
- 1.浴衣にフワフワのカビが生えてます。払って取ればOK?
- 2.浴衣のカビ臭い匂いってアイロンすれば取れますか?
- 3.浴衣のカビを自分で取ろうと思うのですが。
- 4.浴衣のカビってクリーニングに出せば落ちますか?
- 5.浴衣のカビを放っておくとどうなる?
- おわりに
1.浴衣にフワフワのカビが生えてます。払って取ればOK?
浴衣に生えている白っぽいフワフワとしたカビは「白カビ」です。これの「とりあえずの応急処置」として、表面のカビを払って取り去るのはOKです。例えば「来週の花火大会にとりあえず1回は着たい」といった時の急場の対策をご紹介します。
【浴衣の白カビの応急処置】
- 庭やベランダ等の屋外に浴衣を干します。
- カビ菌の吸い込み防止のために、マスク等で口と鼻を保護しておきます。
- 柔らかい布(起毛した布が理想的)で、白カビが生えている部分を払うようにしてカビを落とします。グイグイと押し込まないことが大切です。
- 布の裏側からカビが生えている部分を叩きます。
- 表面を払う → 裏から叩くを何度か繰り返し、目立たなくなったら応急処置はOKです。
応急処置後には必ず本格的なカビ取りを!
白カビは表面を払うと目立たなくなりますが、これでカビ菌がいなくなったわけではありません。カビ菌の根っこは繊維の奥にまで張り巡らされてしまっているので、このまましまうとまた白カビが生えてきます。
さらに時間が経つと、この白カビ部分が酸化して厄介なシミになってしまいます。「応急処置で見えなくなったから安心」と考えるのは絶対にNGですよ。
青黒いカビのシミには応急処置できる?
青カビ・黒カビによるシミについては、残念ながらご家庭での応急処置を行うことができません。帯等で隠せる場所なら、その時だけごまかして着用するのはOK。でも放っておくとどんどんカビ被害が広がるので、早めに専門店に持ち込みます。
2.浴衣のカビ臭い匂いってアイロンすれば取れますか?
カビ臭い浴衣に「匂い対策・カビ対策」としてアイロンをかけるのはおすすめしません。やり方によっては、かえってカビが増えてしまう原因となってしまうことがあります。
家庭用のアイロンの温度を与えるだけでは、カビ菌を完全に根絶させることは難しいです。むしろ中途半端に温められたり、蒸気で水分が増えることでカビ菌が活発になってしまい、匂いが広がってしまうケースがあります。
特に吊るして蒸気をあてるタイプの「スチームアイロン」は絶対にカビ臭い浴衣には使用しないでください。
浴衣の匂いは陰干しで対処
浴衣のカビ臭い匂いが気になる場合には、応急処置として「陰干し」をしましょう。陰干しとは、直射日光が当たらない風通しの良いところに浴衣を干して、浴衣の繊維にこもった空気を入れ替えることを言います。
カビの程度にもよりますが、一週間~10日程度の陰干しを続ければ、匂いがほとんど目立たなくなることが多いです。
ファブリーズはNG!
「カビ臭い匂いが気になるから」とファブリーズ等を使おうとする人がいますが、これはNG。ファブリーズ製品にも、和装品には使えないことは明記されています!
「リセッシュ」「ファブリーズ」等の除臭グッズは「シミ」「色抜け」「滲み」等の原因になりますので、浴衣には絶対に使わないようにしましょう。
3.浴衣のカビを自分で取ろうと思うのですが。
残念ながら、浴衣にできたカビによるシミはご自宅で自分で取ることはできません。カビによる被害が小さいうちに、早めにクリーニング店等の専門店に相談をしましょう。
カビ取りすると色が落ちる!
浴衣に生えたカビは、「水洗い」や一般的な「洗濯」では落とすことができません。
また私達が通常使っているような漂白剤(酸素系漂白剤)でも、カビを取り除くことは不可能です。
カビ菌を除去するには、超高温でカビを死滅させたり、作用の強い溶剤等を使うことになります。しかしご家庭にある漂白剤等でこの作業を行うと、次のようなトラブルになってしまいます。
- 浴衣の色が抜ける(変色する)
- 浴衣の生地が薄くなる(破ける)
- 浴衣の表面が白っぽくなる(スレ) 等
カビ取りのためのシミ抜きに失敗してしまうと、あとから専門店に持ち込んでも浴衣を元に戻せなくなるケースが多いです。自己判断で
4.浴衣のカビってクリーニングに出せば落ちますか?
浴衣のカビは、一般的なドライクリーニング(丸洗い)をするだけでは完全には落ちません。
「浴衣のカビ取り」ができるお店に相談をしましょう。
ドライクリーニングだけではカビが消えない
「カビくさい匂いが気になるから」と、近所のクリーニング屋さんに特にカビなどの相談をせずにクリーニングに出したとしましょう。この場合、ほとんどのお店では「ただ丸洗いをするだけ」てお客様のお手元に返してしまいます。
「丸洗い=ドライクリーニング」というのは、石油系溶剤を使い、専用の洗濯機で洗う機械洗いのことを言います。
石油溶剤では油汚れや皮脂汚れ等は落ちますが、「カビ」はキレイには落とせません。
表面のカビは一時的に目立たなくなり、匂いも一時的には消えますが、カビの根っこはしっかり繊維に残っています。そのため何ヶ月かするとまたカビが生えだしたり、かび臭くなってしまって「クリーニングの意味が無い」となってしまうのです。
カビには「着物のカビ取り」が必要
浴衣のカビの場合、着物(和装)向けのカビ取りをするのがもっとも効果的です。カビ取りでは職人さんがひとつひとつのカビのシミを手作業で取り去って、さらに布地全体に対し消毒(オゾン消毒など)を行います。
着物(浴衣)のカビ取りは、着物専門のクリーニング店や、着物のお手入れを専門に扱っている悉皆屋さん(しっかいや)等にお願いできます。最近では、宅配便で全国対応する着物専門クリーニング店や悉皆屋さんも増えました。
「家の近所に着物専門のお店が無い」「浴衣のカビ取りをクリーニング屋に断られた」といった場合には、このような全国対応をしてくれるお店に相談をしてみるのも手ですよ。
5.浴衣のカビを放っておくとどうなる?
放置された浴衣のカビは、2~3年という時間の中で酸化して「黄変(おうへん)」という変色ジミになります。黄変は最初は黄ばみ(黄色っぽいシミ)としてあらわれ、徐々に色がオレンジっぽく、そして茶色、焦げ茶色へ…と、シミの色が濃くなっていきます。
最終的にはあちこちに焦げ茶色のシミができて、繊維を破壊し、浴衣自体が脆い(破けやすい)状態になってしまいます。ここまで来ると着物の専門店でも直しようがありません。
「黄変」が一度できてしまうと、一般的なシミ抜きやカビ取りだけでは対処ができなくなります。
「カビくさい」「カビを見つけた」という時点で、できるだけ早くお店に相談をすることが大切です。
おわりに
浴衣にカビが生えているのを見つけたら、クローゼットの中のその他の衣類も必ずチェックをしてみましょう。他にカビが生えたり、かび臭くなっている衣類はありませんか?
カビ菌は「湿気がこもった場所」「換気されていない場所」「陰干しをしていない衣類」の中ではどんどん増えて、カビ被害を広げてゆきます。カビ臭い浴衣を一枚みつけたら、他の衣類の陰干しなども行って、カビ予防対策もしましょうね。