「洋服のシミ抜きにハイターを使った失敗した」…衣類のシミ・汚れのトラブルで、よくこんな質問を見かけます。「ハイター」は花王が販売する漂白剤のブランドです。
「ハイター」という名前のついた衣料用・台所用等の様々製品があり、また衣料用には塩素系・酸素系の製品があるため、誤った商品を買って衣類のシミ抜きに失敗をしてしまう人が少なくありません。
ここでは漂白剤「ハイター」について、その違いや見分け方を解説していきます。「ハイター」の選び方で迷ってしまった時には参考にしてくださいね。
「キッチンハイターじゃなければ良い」は間違い!
しみ抜き剤についての情報で「ハイターには衣料用と台所用があるので『キッチンハイター』を避ければ大丈夫」といった情報が出回っていることがありますが、これは正しくありません。
そもそも「ハイター」という名前がついた製品は花王にたくさんあるので、「キッチンハイターを避ける」だけでは間違ってしまうのは当然です。
花王の「ハイター」名称の製品一覧
【衣料用漂白剤】
【台所用漂白剤】
【住居用洗剤】
「ドラッグストアでハイターを買ってきて!」と言われたら、初心者さんは困ってしまいそうですよね。では衣料用で「ハイター」という名前がつく商品を、どのように見分けたら良いのでしょうか。
「ハイター」は塩素系漂白剤
衣料用漂白剤のうち、単なる「ハイター」という名前が付いているものは「塩素系の漂白剤」です。塩素系の漂白剤には次のような特徴があります。
白モノにしか使えない!
塩素系の漂白剤は、非常に漂白力が強いです。染料まで抜き取ってしまうので、色物には使うことができません。薄い色でも濃い色でも、色がついている繊維に塩素系漂白剤(ハイター)を使うと、その部分の色が抜けてしまいます。
ですから「ハイター(塩素系)」が使えるのは、白いナフキンや白い割烹着等、まっ白い衣類のみです。「オフホワイト」や「生成り」もだめなので、「真っ白になっても良いものだけ」と覚えましょう。
服を傷めることがある
塩素系の漂白剤の強い漂白力は、長時間の浸け置きで素材を傷めてしまうことがあります。おしゃれ着等、デリケートな素材には使うことができません。
基本的に白色の作業着(調理用の服等)、丈夫な衣類の漂白等を行うために使う漂白剤です。
変色を起こすことがある
樹脂加工(シワ防止加工等)がされた衣類にハイター(塩素系)を使用すると、黄ばみ(黄変)を起こすことがあります。
この場合、二酸化チオ尿素(還元系)等が含まれた漂白剤(花王ではハイドロハイター)で対応をしなくては変色が戻りません。
また日焼け止めの成分に反応し、衣類をピンク色に変色させてしまうこともあります。
刺激臭がある
ハイター(塩素系漂白剤)は、塩素特有のツンとして刺激臭があります。気化した刺激臭等を吸い込むと具合が悪くなってしまう人も。作業中には必ず換気をすることが大切です。また敏感な方は、マスク等で鼻や口を覆いましょう。
手肌への刺激も強いため、作業にはゴム手袋等を使用します。
使えない素材が多い
塩素系漂白剤は、毛・絹・ナイロン・ポリウレタン・アセテートには使用ができません。少しでも使用すると激しい変質や劣化を起こしてしまいます。混紡等で見落としてしまうことが無いよう、十分に注意しましょう。
除菌対策・コロナ対策には有効
ハイターは次亜塩素酸ナトリウムを主成分としており、各種の雑菌の殺菌、新型コロナウイルス等を含むウイルスの除去に有効であることが厚生労働省からも認定されています。例えば雑巾(ぞうきん)の殺菌、白マスク(ガーゼマスク)の消毒等に対しては、塩素系漂白剤を用いた方が良いです。
混ぜて使わないこと
塩素系漂白剤は、酸性タイプの洗剤と混ぜて使うと有毒なガスを生じます。例えば酸性のトイレ用洗剤や、クエン酸等と混ぜて使用してはいけません。
「ワイドハイター」は酸素系漂白剤
花王の「ワイドハイター」という名前がつくものは「酸素系漂白剤」です。酸素系の漂白剤(液体タイプ)には、次のような特徴があります。
色柄ものにも使える
酸素系漂白剤は、塩素系とは異なり、染料を剥がす力は弱めです。そのため色柄もののシミ抜きにも使うことができます。
一般的に「衣類のシミ抜き」をする場合には、こちらの酸素系漂白剤を使用することがほとんどです。
消臭対策にも便利
酸素系漂白剤は、汚れを分解する力だけでなく、ニオイの元になる「菌」を除菌する力にも優れています。
そのため衣類のニオイが気になる時の浸け置き洗いにも「酸素系漂白剤」を加えると良いですし、お子様やスポーツをする人等が多いお洗濯の時には、普段のお洗濯に少量の酸素系漂白剤を加えるのもおすすめです。
また室内干しの時に起こる「生乾き臭」の対策にもなります。部屋干しが多い人や、梅雨の時期等にはピッタリですね。
粉末タイプはより強力
粉末タイプの酸素系漂白剤は、液体タイプに比べて漂白力や消臭力がより強めです。そのため色柄物でガンコな汚れが気になる時や、手強いニオイが付いた衣類の消臭等にも向いています。
花王のハイター製品ですと「ワイドハイター クリアヒーロー クレンジングパウダー」等が粉末製品ですね。
ただ、粉末系の酸素系漂白剤は弱アルカリ性なので、毛(ウール等)やシルク(絹)等の動物性の製品には使うことができません。また「おしゃれ着洗い(中性洗剤使用)」が指定されている製品にも使用NGです。
同じ「ワイドハイター」という名前でも、粉末タイプやクリアビーズタイプだと使えない素材が増えます。その点には注意しましょう。
ハイターについてのよくある質問Q&A
酸素系と塩素系って見分けられますか?
ざっくり言えば「ハイター」が塩素系で「ワイドハイター」が酸素系ですが、製品パッケージに必ず「酸素系」「塩素系」と書いてあります。またインターネットで購入するときも、説明書きに必ず「塩素系」または「酸素系」という説明文が入っています。
布マスクの消毒をする時にはどうしたらいい?
真っ白のマスク(ガーゼマスク等)であれば、ウイルス除去効果のある塩素系漂白剤(ハイター)を使ったほうが良いでしょう。しかし色物・柄物のマスクについては、色抜けを起こすのでハイターは使うことができません。
色柄に使える酸素系漂白剤(ワイドハイター)を通常の洗剤に加えて、黄ばみ予防対策や消臭対策等はしておきましょう。
おわりに
漂白剤「ハイター」と言っても、違いが随分あることがおわかりいただけたでしょうか?一般的に衣類のシミ抜きにはワイドハイター(酸素系)を使うことが多いですが、例えば白いフキンであったり、白衣等を真っ白に仕上げたい!という時には普通のハイター(塩素系)を使った方がしっかり白く仕上がりますね。
「ハイター(塩素系)」と「ワイドハイター(酸素系)」の違いをよく知って、上手に使い分けていくことが大切ですよ。