「久しぶりに洋服を出したら黄色いシミが付いていた」「覚えの無い茶色いシミがたくさん…」こんな経験がある人、意外と多いのでは?これらの「気づかないうちにできているシミ」の多くは、酸化によって起こる古いシミです。一般的なシミ抜き・シミ取りでは酸化シミ・古いシミは落とすことができません。
でも愛着のある服を「シミができたから」と手放すのは寂しいですよね。ここでは酸化によって起こった黄ばみや古いシミへの対処法についてご紹介していきます。「なんとかしたい!」と思った時の参考にしてみましょう。
酸化による黄ばみ・古いシミとは
覚えのない黄ばみや茶色いシミの元は、「以前に付けた汚れ」です。お酒等の飲み物汚れや汗汚れ等の成分が繊維に残っていると、それらが酸素と結びついて少しずつ衣類を変色させていきます。(シルクの場合は特例として、繊維自体が黄ばみやすいので一度も着ずに放っておいても黄ばんでしまいます。)
時間をかけて変色をしているシミなので、シミの部類としてはとても手強いです。状態によっては、衣類を元に戻せないことがあります。
酸化による黄ばみ・古いシミには漂白剤orしみ抜き剤
酸化による古いシミ・黄ばみには、汚れを落とすだけではなく「漂白」をする作業が必要です。また通常の漂白に比べて強い作用を持った漂白剤を使うことになります。
1.塩素系の漂白剤を使う方法
塩素系の漂白剤とは、商品名でいうと「キッチンハイター」や「キッチンブリーチ」等の亜塩素酸ナトリウムを含む漂白剤のことです。非常に強い漂白力があるため、「元々の生地の色も脱色させる」という働きがあります。そのため、塩素系漂白剤は「真っ白の生地」にしか使うことができません。
また生地を傷ませる力が強いので、漂白した部分がゴワゴワに固くなってしまうというデメリットも。「どうしても酸化ジミの古い汚れが取りたい!」という人向けの、最終手段のような漂白方法です。
用意するもの
- 塩素系漂白剤
- 白いタオル
- 綿棒または古い歯ブラシ
- 小皿・タッパー等の容器
※作業はステンレスの流し、風呂場・洗面台等、漂白剤が付いても問題ない場所で行います。
※塩素系漂白剤が付いた衣類はもれなく脱色します。作業着は脱色しても良いものを選んでください。
酸化シミをシミ抜きする手順
- 容器に少量の水を入れて、塩素系漂白剤を垂らし、溶液を作ります。
- 白いタオルを敷いてから洋服を広げて、シミ・黄ばみがある箇所を表に向けます。
- 綿棒または古い歯ブラシに1.の溶液をつけて、シミがある箇所を軽く叩いていきます。
- 漂白が完了したら、水でよくすすぎます。
- 仕上げに洗濯洗剤を使って、全体を仕上げ洗いしましょう。
注意点
※塩素系漂白剤が使用できるのは、綿・麻等の厚く丈夫な生地です。一部の化繊製品やデリケートな素材の場合、塩素系漂白剤で生地が溶けたり、変質することがあります。
※古くなっている生地、下着等の薄い生地に使用すると、穴が開く等のダメージが起きる可能性があります。
※生成り・薄いベージュ等の生地には塩素系漂白剤は使えません。白く色抜けし、元に戻らなくなります。
※模様・柄の部分に塩素系漂白剤が付いた場合にも脱色が起こります。
※レースやフリル・ビーズ縫込み・プリント等の特殊な加工の衣類には塩素系漂白剤は使用できません。
2.酸素系の漂白剤を使う方法
「色物なので塩素系漂白剤は使えない」という場合には、色・柄物にも使用することができる酸素系漂白剤を使用します。ただし普段のお洗濯でよく使われる液体タイプの酸素系漂白剤は作用がマイルドなので、酸化した古いシミのシミ抜きには適していません。
液体より漂白力が強く、酸化した黄ばみ等にも対処しやすい「パウダータイプ(粉状)の酸素系漂白剤」を使用します。
用意するもの
- 酸素系漂白剤(パウダータイプ)
- バケツまたは洗面器
- バケツのフタか食品用ラップ
- 洗濯用の洗剤
酸化シミをしみ抜きする手順
- バケツか洗面器に50℃~60℃前後のお湯を入れます。(沸騰したお湯に同じ量の水を入れれば、大体50℃のお湯が作れます)
- 酸素系漂白剤を2リットルあたり大さじ1杯程度の量で入れて、よく溶かします。
- 衣類を全体的に漬け込みます。
- バケツにフタをするか、食品用ラップで覆います。フタをすることでお湯の温度が下がるのを防止します。
- 30分~60分程度放置します。
- 放置時間を過ぎたら衣類の状態をチェックし、水道水でよくすすぎます。
- 洗濯用洗剤で手洗いまたは洗濯機洗をして仕上げます。
シミ抜きの注意点
※酸素系漂白剤は塩素系漂白剤に比べると漂白力が控えめです。シミの状態によっては、シミの色が消えない・汚れが取れないことがあります。
※繰り返し酸素系漂白剤をシミ抜きをしないでください。元々の染料が流れ出して色落ちしたり、変色する原因になります。
※90分以上の放置はしないようにしましょう。色落ち・色移りが起きる原因になります。
※酸素系漂白剤は、シルクやウール等には使うことができません。
※金属の部品が付いている衣類には酸素系漂白剤での漬け込みができません。変色の原因になります。
3.市販のしみ抜き剤を使う方法
「塩素系漂白剤を使うのはちょっと怖い」「でもマイルドな酸素系漂白剤だと、酸化した古いシミが取れなかった…」こんな時には、「しみぬき剤」を使ってみるのも手です。
「しみ抜き剤」には洗剤等には配合されない特殊な酵素や成分が配合されており、時間をかけて少しずつ酸化した古いシミを分解してくれます。製品によっては「水洗い無しでもOK」というものもあるので、絹等の水洗いできない製品の酸化シミを取りたい時にも便利です。
【しみ抜き剤の例:スポッとる】
塗ってから干して乾かすことで、配合されている酵素がシミを分解するタイプのしみ抜き剤です。血液シミ・墨汁シミ・機械油シミ等にはあまり強くありませんが、「繰り返し使用することで薄くなる」という口コミも見られました。
ただし繊維の素材や染色によっては、変色・退色が起こる可能性も考えられます。事前によく変色テストを行ってからシミ抜きをすることをおすすめします。
酸化した古いシミ・黄ばみはクリーニングで取れる?
「酸化した古いシミ、自宅で取るのは難しそう」「プロに頼んだ方が良いかも…」こんな時、クリーニング店では酸化シミのシミ取りをしてくれるのでしょうか?
個人店舗or自店舗で服を洗う店がおすすめ
酸化した古いシミについては、一般的なクリーニング屋では断られてしまうことも多いです。チェーン型のクリーニング店や大きな店舗、宅配クリーニング等はダメかも……ということですね。
この理由は、シミ取りの際の漂白で衣類がダメージを負うことが多いため。万一のダメージでお客様からクレームが来ると大変だから…ということで、多くのチェーン系クリーニングでは酸化シミに対応していません。
「どうしても!」という場合には、個人でやっているクリーニング店や、工場に服を持っていかずに自社で服を扱っている店舗、服のリペアを行っている専門店等に相談することをおすすめします。ただし服を預ける際に「万一の際にはクレームを入れない」と誓約書を一筆書く場合もあります。
着物は悉皆屋か専門のクリーニング店へ
着物に酸化による古いシミ・黄ばみ(黄変)が出た場合は、着物のお手入れの総合ショップである悉皆屋(しっかいや)か、着物を専門に扱うクリーニング店に相談をしましょう。機械洗いだけでなく職人による手作業を行っており、洗い張りや染色補正等にも対応できることが条件です。
いわゆる「激安系」の着物クリーニングではほぼ断られてしまいますので、ご注意ください。
おわりに
酸化した古いシミ・黄ばみの対処法についての情報はお役に立ちそうですか?酸化シミは重度になると服自体を変色させてしまうため、元に戻すには高度な技術が必要になります。ご家庭でのシミ抜きが難しいのはもちろん、クリーニング店でもなかなか対処ができないシミなのです。
酸化シミ・古いシミのシミ抜きについては、クリーニング店での料金も高くなりがちです。事前に見積を出してくれるお店を選ぶことをおすすめします。