子羊の毛皮になめしを施した革製品である「ムートン」。牛革(スムース皮革)とは異なる、独特の手触りと温かみのある表情で人気を博しています。ムートンブーツやコート、手袋、そしてラグ等、冬用の衣類やインテリア製品にムートンのアイテムを持っているという人も多いのではないでしょうか。
しかしこのムートン、一度シミが付いてしまうと家でのお手入れが難しい厄介な存在でもあります。でもアイテムや状態によっては、ムートンも自宅でシミ抜きをすることができるんですよ。
今回はムートンのシミ抜き方法を状態やアイテムに合わせ二通りご紹介していきます。
1.水濡れのシミは「濡らし&乾燥」で元通り!
表面をスエード加工してあるムートンのアイテムで多いお悩みが「雨や水等でシミになってしまった」というもの。スエード加工したムートンはベージュやライトブラウン等の薄めの色展開が多いのですが、濡れた部分だけが濃い色に見えて戻らない…と悩んでいる人は少なくないようです。
実はこの雨や水に寄る雨シミ・水シミは、ほとんどの場合は汚れがあまり付いていません。スエード加工には独特の起毛の流れがありますが、水で濡れた部分だけが毛が収縮してしまっていて、色味が変わって見えているだけなんです。
この繊維の部分的な収縮を元に戻してあげるには、「全体を濡らしてから乾かして、毛並みを元に戻す」という方法が一番!とは言えただビショビショに濡らしてしまうと、アイテムによっては皮革全体の大幅な収縮が起こったり、カビが増える原因にもなってしまいます。上手に表面を濡らし、毛並みを整えていきましょう。
用意するもの
・ムートン専用ブラシまたは皮革用馬毛ブラシ
・新聞紙またはいらない紙(ブーツや靴・手袋の場合)
ボーマ(BOMA) ムートン お手入れ用ブラシ 294259BO
ムートンのシミ抜きの手順
- 古いタオルか布を濡らしてから、ギュッと固く絞っておきます。
- 1枚目のタオルでシミの部分を軽く叩き、汚れを取り除きます。ゴシゴシ強くこすらず、優しくポンポンと叩くのがコツです。
- 2枚目のタオルでシミ部分から輪郭をぼかすようにタオルで水分を与え、少しずつ表面を濡らしていきます。
- シミがある部分が1パーツのみの場合には、パーツだけ濡らすのでもOK。全体的に水玉ができている場合には、アイテムの全体を濡らしていきます。ビショビショにはせず、表面のみを濡らすようにしましょう。
- シミのある箇所がわからない程度に表面が濡れたら、3枚目の乾いたタオルで全体を軽く叩いて水分を吸い取ります。
- ブーツや手袋の場合は、中に新聞紙を詰めて形を整えます。こうすることで、内側の乾きが早くなり、型崩れを防げます。
- 形をよく整えて、直射日光のあたらない場所で陰干しをします。
- 十分に乾かしてから、ムートン専用ブラシ(スエード加工用のもの)または馬毛ブラシで表面をよくとかし、毛流れを均一にします。
注意点
※陰干しの期間は季節や湿度によっても変わります。乾燥が不十分だとカビの原因になりますので、内側までしっかりと乾燥させましょう。
※濡らしただけで終わらせてしまい、ブラシで毛流れを整えないと、表面がゴワゴワ・ケバケバとした状態になってしまいます。必ず馬毛等のスエード表面加工に適したブラシで毛流れを復活させましょう。
2.「水洗い」でシミ抜きできることも?
皮革製品であるムートンのアイテムは、原則として家庭での水洗いができません。これはムートンは収縮しやすく、型崩れ等が起きやすいこと、また独特の風合いが失われやすいことなどが理由となっています。
しかし「多少の収縮ならばOK!」という海外のユーザーは、ムートンラグ等のアイテムを手洗いでシミ抜きしていることも多いです。自己責任での対処になりますが、水洗いでのシミ抜き方法もご紹介しておきましょう。
用意するもの
・ヘアリンス(ヘアトリートメントは不向きなのでNG)
・古いタオル(バスタオル等の大判のもの)4~5枚
・ムートン用のブラシ
シミ抜きの手順
- バスタブに30℃程度のぬるま湯をはって、ヘアシャンプーを適量溶かしておきます。<
- ムートンラグを全体的に浸します。
- 上から手で毛を押すようにしながら、汚れを洗っていきます。シミのある部分は特にていねいにつまむように洗いましょう。ゴシゴシこするのは毛が痛むのでNGです。
- シャンプー液を流して、2回程度よくすすぎます。
- 再度きれいなぬるま湯をはってからリンスを適量溶かし、もう一度ムートンラグを浸します。毛の全体にリンスが行き渡るようにしましょう。
- ぬるま湯または水で、2回程度よくすすぎます。
- 軽く絞ってからバスタオル等をあてて、叩くように水分を取っていきます。
- 直射日光のあたらない場所で、十分に陰干しをします。
- 全体がよく乾いたら、専用ブラシで毛流れを整えます。
注意点
※毛の収縮等のトラブルを防ぐため、洗浄力の強いアルカリ性洗濯洗剤や漂白剤等は使用できません。必ずヘアシャンプーを使用してください。
※色素が多いシミ・油分の多いシミの場合、上記の方法ではシミが取り切れない場合がありあります。
※ブーツやジャケット・手袋等、収縮・型崩れによって着用が難しくなるアイテムには上記の方法は使えません。
※古く乾燥したムートンは、水洗いをしない方が良いです。水濡れした部分が破けたり、その部分が弱くなって後から裂けることがあります。
※染色方法によっては、色落ちや色抜けが起こることがあります。目立たない部分で変色sテストを行うことをおすすめします。
※40℃以上の高温のお湯を使うのはNGです。毛や革のはげしい収縮が起こります。
家でシミ抜きできないムートンのシミとは
以下のようなシミがあるムートン製品については、残念ながら自宅でのシミ抜きができません。
自分でのシミ抜きが難しいケース
・ぶどうジュース・ワイン・コーヒー等のシミ:色素が多いため、家庭でのソフトなケアでは汚れが落とせない
・メイク用品・食べこぼしのシミ:油溶性のシミの皮革からの除去は家庭では難しい
・シミ範囲が5センチ以上ある
・シミができてから一週間以上が経過している
またブーツやジャケット等、型崩れをできるだけ防ぎたい製品についても同様です。自宅でのケアではどうしても収縮が起きやすくなります。
万一ムートンの収縮や毛の変質が起きてしまうと、専門店でも元に戻すことができません。
上記のようなアイテムについては、「ムートン製品」を扱うことができるクリーニング専門店に早めに相談をしましょう。
おわりに
ムートンのシミ抜き方法はいかがでしたか?ムートンのシミ抜きをする時に大切なのは、どの場合でも「乾燥」をしっかりとさせることと「ブラッシング」です。日本は湿気が多い土地なので、乾燥が不足しているとせっかくのリアルムートンにカビが生えてしまいやすくなります。
また専用ブラシでのブラッシングは、シミ抜きのあとだけでなく、使うたびのお手入れとしてもとても大切!ブラッシングをしてあげるだけで、ムートンのアイテムの寿命が長くなりますよ。この他、シミが取れた後には、今後にシミがつきにくいようにムートン専用の防水スプレーもかけてあげると安心です。