衣類・服の「陰干し」って聞いたことがありますか?陰干しは「かげぼし」と読みますが、衣類のお手入れの基本のひとつでもあります。衣類の陰干しを知っておくことで、大切な服や着物を長持ちさせられるかもしれませんよ。
ここでは衣類の陰干しの方法やメリット、行う際の注意点等を詳しく解説していきます。
「陰干し」とは何?基本のやり方
陰干しは「かげぼし」という読み方をします。「陰(かげ)」という言葉が入るので時々「真っ暗な場所で干す」とカン違いする人もいるようなのですが、正確には「直射日光に当たらない場所で衣類を干す」という意味です。
直接お日様に当たらなければ、明るいお部屋や屋外で干しても大丈夫なんですよ。では陰干しの実際の方法を見てみましょう。
【陰干しの方法】
- 屋外(庭やベランダ)または屋内で、直射日光の当たらない場所を選びます。
- ハンガーか物干しに衣類をかけて、形をよく整えます。
- 屋内の場合には湿度や温度を調整します。
- そのまま1日~数日程度干します。(屋外の場合には夜間は取り込みます)
基本的には「干す」だけでOKなのでシンプルですが、「日光に直接さらなさい」ということが大切です!また風通しの良い場所を選ぶようにしてくださいね。何度か陰干しをしてみて、お家の中で陰干しに向いた場所を探してみましょう。
陰干しを行うメリット
なぜ衣類の陰干しが推奨されることが多いのでしょうか。陰干しには、実はいろいろなメリットがあるのです。
色あせ(褪色)を防ぐ
直射日光(紫外線)は、染料を破壊して色あせを促進させてしまうことが多々あります。色の濃いTシャツ等を干して、なんとなく色が薄くなったり、買った時より色味が悪くなったことがありませんか?もちろん洗剤等で色落ちすることもありますが、実は日干しで色あせ(褪色)している…ということも多いんですよ。
直射日光を避けた「陰干し」では、このような色あせ・褪色のリスクをできるだけ減らすことができます。特に次のような衣類には、色あせ対策として陰干しを選んだ方が良いのです。
- 赤・黄色等のハッキリした色合いの衣類
- 黒・紺色等の濃い色の衣類
- 柄物の衣類
- 絹・麻等の褪色や変色が起きやすい衣類
- 長持ちさせたい「おしゃれ着」
繊維のダメージを減らせる
直射日光に長く当たり続けることで、染料だけでなく繊維自体がダメージを負ってしまうこともあります。またデリケートな加工がされている衣類の場合、その加工が日光で劣化してしまうケースも多いのです。
「陰干し」を行う理由として、繊維のダメージをできるだけ減らし、また加工の傷みを減らすという意味合いもあります。特に高額なお洋服等の場合には陰干しをする方が多いです。
- ウールやカシミヤ等の動物性繊維
- 細い糸で編まれたニット素材
- 刺繍・縫い付けなどの加工がある製品
- 特殊プリント・ラメ加工等がある製品
上記は一例ですが、陰干しにした方が良い衣類の種類は実にたくさんあります。
衣類のニオイ取り(消臭対策)
陰干しをすると繊維の奥に溜まっていた空気が入れ替わります。この時に繊維にくっついていたニオイの分子も出てくるので、ある程度の消臭効果も得ることができます。
レストラン等に食事に行くと、その場所のニオイが衣類に付いてしまうことが多いですよね。こんな時には、少し長めに陰干しをしておくと衣類のニオイが気にならなくなりますよ。
洗えない衣類のお手入れ
一度着用した衣類には、一日の中でかいた汗や体熱による湿気がたくさん含まれています。すぐに洗ってしまうのであれば良いですが、自分で水洗いができない製品だと、衣類の中にはいつまでも湿気が溜めこまれてしまうわけです。
湿気が残った状態でクローゼットや引き出しに衣類をしまうことは、温まった状態の繊維を好む「カビ菌」や「虫」の原因に。次に着る時に虫食いやカビのシミが!そんなリスクがあるのです。
衣類の陰干しをしておくと、繊維の奥にこもった湿気が取り除かれて、このようなリスクを減らすことができます。自宅で洗えない衣類の基本のお手入れとして「陰干し」は重要なのですね。
陰干しをする時の注意点
いろいろなメリットがある陰干しですが、適当に衣類の陰干しを行うと良くない結果となることも。陰干しに失敗しないための注意点も知っておきましょう。
室内でも直射日光を避ける
「部屋の中ならどこでも陰干し」と思っていませんか?紫外線A波(UVA)は窓ガラスを通り抜けて入ってきますので、部屋の明るい場所・日光の当たっている場所に衣類を干していると服は色あせしてしまいます。
室内に干す場合でも、必ず直射日光の当たらない場所を選びましょう。
空気が溜まっていませんか?
陰干しでは直射日光に当たらない分、「熱」による衣類の乾燥力が弱いです。そのため風通しの悪い場所、空気の溜まった場所に干していると、いつまでも衣類が乾燥できない…ということになります。
特に濡れた衣類を陰干しする場合、空気の流れの良くないところで干し続けると、雑菌が増えて臭くなったり、カビ菌が生えてしまうことも!必ず風通しの良い場所を選ぶようにしましょう。
雨の直前直後は避ける
「もうすぐ雨が降ってきそう」「昨晩はたくさん雨が降った」こんな時には屋外で陰干しをするのは止めましょう。雨が近い時には空気中に水分が多く、陰干しによる十分な乾燥効果が得られません。
また梅雨や真夏等で湿度が非常に高い場合も、屋外での陰干しは避けた方が良いでしょう。
日光の動きに要注意
日光が挿す角度は、一日をかけて少しずつ東から西へと動いていきます。そのため午前中には日陰(ひかげ)だった場所が、午後になると日向(ひなた)になってしまうというケースはよくあります。
陰干しでは一日以上長く衣類を干すので、常に日陰であることが大切です。午前と午後で干す場所を変えたり、常に日陰となる場所を選ぶようにしましょう。
室内の場合はエアコンか除湿機を
室内で陰干しを行う場合には、室内の湿度を確認しておきましょう。外の空気が乾燥している場合には、窓を開けて換気をした状態で陰干しを行うのでもOKです。
しかし外気の湿度が高かったり、部屋の中が蒸している場合には、エアコン等で湿気を取るようにします。また除湿機等を使うのも有効です。
人間が暮らす上で快適な湿度は40%~60%位なのですが、陰干しの場合には40%以下のパリッと乾燥した状態が理想的。「この部屋、空気が乾燥しているな」という位が陰干しにベストと覚えておきましょう。
状態に合わせて干す日数を変える
洗濯した衣類を乾かすだけであれば、陰干しの日数はそこまでかかりません。しかし例えば「消臭効果」を求めて陰干しをする場合だと、一日では衣類のニオイが飛びきらない可能性が高いです。
特にしっかりとニオイが染み付いている場合だと、数日程度の陰干しが必要となることもあります。衣類の状態、干す目的に合わせて、陰干しの日数を上手に調整していきましょう。
なお何週間も衣類を干しっぱなしにするのはNGです!あまりにも長期間の陰干しを行うと、部屋の中に入り込んでいる紫外線(UVA)によって衣類が色あせを始めます。例えば「一週間も陰干ししてもニオイが取れない」といった場合には、別の対策を取るようにしてください。
おわりに
衣類の陰干しの方法やメリット・注意点を知っておくと、一般的な普段着はもちろん、おしゃれ着や着物等のデリケートな衣類のお手入れにも役立ちます。「真っ白なシーツやタオルは日干しで直射日光をあてる、濃い色のおしゃれ着は陰干しに」等、上手に乾燥の方法を使い分けてみてくださいね。