クリーニング屋さんでお願いできる「ドライクリーニング」。スーツやコート・スカート等の衣類をドライクリーニングした経験は、ほとんどの人がありますよね。毎週のようにドライクリーニングを使っている!という人も珍しくないことでしょう。
でもドライクリーニングとはそもそもどんな洗濯方法なのか、知らない人もいるはず。ドライクリーニングは自宅での洗濯とどう違い、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここではドライクリーニングに対してよくある4つの疑問に回答し、初心者にもわかりやすく解説していきます。
1.ドライクリーニングとは何?
「ドライクリーニング」とは、水の変わりに有機溶剤を使って衣類を洗濯する方法です。「水を使わない(水洗いではない)、濡れない」という意味から「ドライ」と名付けられたと考えられています。
ドライクリーニングでは主に次のような溶剤・洗剤が使用されます。
とてもカンタンに言えば、「水のかわりにガソリンを使って、大きな工業用の洗濯機で洗濯機洗いをしている」というのが、クリーニング屋さんでのドライクリーニングというわけです。
2.ドライクリーニングとは家での洗濯と何が違う?メリットは?
では家での洗濯とドライクリーニングにはどのような違いがあるのでしょうか?ドライクリーニングのメリットについて見てみましょう。
水洗いできない衣類が洗える
ご家庭での洗濯の場合、必ず使わなくてはならないのが「水」です。水洗い以外の選択肢が一般的な洗濯ではありません。
ところが例えば次のような素材は、水を含むと縮んでしまったり、反対に膨張したり、変質してしまうという性質を持っています。
そのためこれらの素材を使った衣類は、一般的には「水洗い不可」となっています。(ウォッシャブルウール等は除きます)しかしドライクリーニングでは、前述のとおり洗濯に「水」を使用しません。そのため水洗いができない衣類も、ドライクリーニングであれば洗うことができるのです。
衣類の縮みや色あせを防ぐ
「木綿や麻は水洗いできるはずなのに、衣類の洗濯表示で『水洗い不可』となっていた…」「なんで多くのオシャレ着には洗濯表示でドライマークが付いているの?」と不思議に思っている人も多いことでしょう。
コットン(木綿)やリネン(麻)は、ザブザブと水洗いができる日常着にも多く用いられれる素材です。
しかし「織り方」によっては、水洗いではげしく縮んでしまうことがあります。
例えば帆布やオックス素材等は、水に通すだけで縦方向に10%も縮むことがあるのです。
またリネン素材のおしゃれ着等は、水洗いを繰り返すと色あせが起きたり、毛羽立ちが目立つことがあります。
しかしドライクリーニングでは水を使用しないため、このような素材の「縮み」「変質」「色あせ」といったトラブルを防ぐことができるのです。
・色あせを防いで新品のような色合いを保ちたい
・毛羽立ちやスレを防ぎたい
このような服を洗うためには、ドライクリーニングがピッタリというわけですね。
衣類の型崩れを防ぐ
自宅で衣類を水洗いをすると起きやすいのが衣類の「型崩れ」です。水を使ったことで素材が収縮・膨張を起こすだけでなく、完全に乾燥するまでの「水濡れによる素材の重さ」によって、袖や肩等の形が崩れてしまうのです。
その点、ドライクリーニングでは衣類の型崩れが起きにくいという大きな利点があります。特に次のような衣類には向いた洗濯方法と言えるでしょう。
・コート
・ジャケット
・スーツ
・プリーツスカート
またデリケートな素材で作られたシャツやブラウス等も、ドライクリーニングであればシワ・ヨレの無い状態で仕上げることができます。
油脂系の汚れ落としに強い
自宅でオシャレ着を洗う場合、縮み対策や風合いを保つために「オシャレ着洗い用」の中性洗剤を使う方が多いですよね。
ところがこの中性洗剤は洗浄力がかなり穏やかなので、しつこい汚れは取ることができません。特に油溶性の汚れを分解するのは苦手です。
これに対して、ドライクリーニングは「石油系の溶剤」を使うため、油溶性お汚れを落とすことはかなり得意としています。
・皮脂汚れ
・ファンデーションや口紅の汚れ
・油系の食べこぼし 等
付いたばかりの小さなシミであれば、ドライクリーニングの丸洗いだけでシミ汚れが落ちきることも多いです。石油溶剤を使ったシミ抜きをプラスすれば、さらにキレイに汚れを落とすことができます。
3.ドライクリーニングは自宅ではできないの?
「そんなに便利なドライクリーニングなら、自宅でもやりたい!」と思う人も居るかもしれませんね。しかし残念ながら、家ではドライクリーニングはできません。
これはドライクリーニングに使う有機溶剤・有機触媒がご家庭では使えないためです。
有機触媒の中には可燃性のものやプラスチックを溶かすような強力な性質のものが多く、そのため一般的な洗濯機では使用することができません。クリーニング店では工業用の特殊な洗濯機を使用しています。
また使用した有機溶剤は、「洗剤と水」のように下水に流すことができません。河川を汚染してしまうため、勝手に廃棄せずに業者に回収してもらうことが法律で定められています。
ドライクリーニングができるのは、クリーニング業法に基づいて定められたクリーニング師が在籍するクリーニング所(クリーニング専門店)のみです。ちなみに「クリーニング代行」はクリーニング業免許が無いので、ドライクリーニングはできません。
4.ドライクリーニングにデメリットや注意点はある?
魅力的な部分が多いドライクリーニングですが、デメリットや注意点はあるのでしょうか。
水溶性汚れは落とせない
油溶性汚れを分解するのを得意とする「ドライクリーニング」。しかしその反対に、水溶性の汚れを落とすのは苦手です。
上のような水溶性汚れがついた衣類をドライクリーニングに出しても、汚れはほぼ落ちません。別途「シミ抜き」や「ウェットクリーニング」「汗抜き」等をオーダーして、水溶性の汚れを落とす対策をしましょう。
高級衣類はワンランク上のコースを
ドライクリーニングのコース内容は、クリーニング業者によって微妙に異なります。ただ上位のコースの方が、ていねいに一枚ずつネットをかけてクリーニングしてもらえたり、洗う枚数を少なめにして衣類へのダメージを防いでもらいやすいです。
大切にしたい高級衣類については、同じドライクリーニングでもワンランク上のデラックスコース等を使うようにしましょう。
クリーニングから戻ったらビニールを取る
ドライクリーニングで使われる石油溶剤・石油触媒は、空気中に蒸発するのが早いという特質を持っています。その成分やニオイが繊維に残る心配はほとんどありません。
しかしクリーニング後に付いてくるビニールをそのままつけっぱなしにしていると、石油系O成分が蒸発せずに留まりやすくなります。衣類に溶剤の成分が残り、ニオイ等のトラブルが起きる原因となるのです。
クリーニングから戻ってきた衣類は、すぐにビニール袋をはずすようにしましょう。
おわりに
ドライクリーニングについての概要や水洗いとの違い、注意点等はいかがでしたか?上手にドライクリーニングを使いこなして、衣類をいつもキレイな状態にしておきましょう!