独特の光沢感やスベスベの手触りが人気のシルク(絹)。シルク100%の「正絹」は、訪問着や留め袖等の着物の素材としても有名ですね。また最近ではシャツやスカーフ・ワンピース等のオシャレ着の他、腹巻き・アームカバーといった肌着・小物類にもシルク製品が登場するようになっています。
そんなシルク製品ですが、シミができてしまうと意外と扱いが大変なのが困った特徴でもあります。正しい取扱方法やシミ抜き方法をしっかり覚えておきたいですね。
今回は絹・シルク製品にシミができた時の注意点や、染み抜きの方法について解説していきましょう。
シルクの服にシミ!まずやるべき3つのポイント
外出先等でシルクの服にシミを作ったら、まずは慌てず以下の3つの応急処置や対処を行います。
1.大きな汚れを取り、水分を吸い取る
マヨネーズ等のゲル状の汚れが残っているという場合には、ティッシュ等でそっとつまむように汚れを取っておきます。その後、タオルもしくはハンカチでシミ部分を軽く叩くようにして、シミに含まれる水分を取っていきましょう。
ワイン・コーヒー等の水溶性のシミの場合、水分を丁寧に取ることで色素が繊維に残るのをかなり防げます。
2.硬く絞ったタオルで軽く叩く
水で濡らして硬く絞ったタオルでシミ部分をトントンと軽く叩いて、色素をタオルに移していきます。常にタオルのキレイな部分がシミに当たるようにして、タオルに汚れを移すことを意識しましょう。
熱いお湯を使ったり、強く擦ったり、洗面所等の石けん等を使ったりはしないでください。
その後、乾いたタオルで更に叩いて水分をもう一度取ります。
3.洗濯表示をチェックする
ある程度の応急処置が終わったら、シミ抜きに入る前に「洗濯表示」をチェックします。シルク関連の製品は、大きく分けて以下の3種類に分類できます。
1)洗濯機で洗えるシルク(洗えるシルク):シルクとその他素材の混紡製品等。旧表示では洗濯機のマーク、2016年以降の新表示ではタライマークに温度表示が書かれています。
2)手洗いで洗えるシルク(洗えるシルク・ウォッシャブルシルク):シルクに防縮加工等を施した製品。旧洗濯表示ではタライに手を入れているマーク、新洗濯表示ではタライに「手洗い」の文字があります。
3)水洗いができないシルク:タライに×のマークが付いています。
このうち1)、もしくは2)のシルクは、自宅でのシミ抜きが原則として可能です。しかし3)のシルク、もしくは洗濯表示が不明の場合には、自宅でのシミ抜きは行なえません。できるだけ早めにクリーニング店に持ち込み、シルクであることを言い添えた上でシミ抜きを依頼しましょう。
なお「訪問着」「留袖」「振袖」等の礼服用の着物は、ほぼ100%のシルク+天然染色製品であり、自宅で洗うことやシミ抜きはできません。礼服着物にシミができた場合には、「着物クリーニング」に対応した業者に速やかに相談をします。
シルク・絹のシミ抜き方法は?
上記のチェックで「洗えるシルク」であることがわかったら、自宅でのシミ抜きを行ってみましょう。ただし洗えるシルクであっても、とてもデリケートな素材であることに変わりはありません。強い漂白剤や合成洗剤等は使わず、素材を傷めにくい「洗濯用中性洗剤」もしくは「シルク専用洗剤」を使用します。
用意するもの
・タオル2~3枚
・ガーゼ2~3枚
・洗面器等の容器
・小皿
・柔軟剤
シルク・絹のシミ抜きの手順
- シミがある部分の裏側にタオルをあてておきます。
- 小皿に少量の中性洗剤を垂らし、水で薄めて溶液を作ります。
- ガーゼに2)の溶液を付けて、シミがある部分をフンワリと軽く叩きます。(絶対にこすらないことが大切です)
- 常にガーゼのキレイな部分が当たるようにして、汚れをガーゼに移していきましょう。
- 洗面器等に水を張って、水の中で振り洗いをしてすすぎます。(すすぎの際に揉まないことが大切です。)
- シミが取れたら、洗面器に少量の中性洗剤を入れて水をもう一度張り、全体を軽く振り洗いします。
- 何度か水を変えながら、水の中で振り洗いをしてすすいでいきます。最後に柔軟剤を入れてすすぎ、仕上げます。
- 乾いたタオル2枚の間に衣類を挟み、上から軽く叩くようにしてタオルドライをします。(洗濯機での脱水・手絞りはNGです)
- 形をよく整えてハンガー等にかけ、陰干しをします。
- アイロンをかけられる製品の場合には、半分程度乾いたところで当布を付けてアイロンをかけ、シミ抜きによるシワをキレイに伸ばします。
※通常の石けん、液体石けん、漂白剤入りや蛍光剤入りの合成洗剤等は絶対に使わないでください。変質・縮み・色落ちを起こします。
※直射日光があたる場所に干すのは厳禁です。日光による黄変(黄ばみ)が起こり、取れなくなります。
※実際のシミ抜きを行う前に、溶液を目立たない部分に付け、色落ち・変色等が起こらないかテストを行うことをおすすめします。
おすすめシルク専用洗剤
・内容量:200ml
・成 分:界面活性剤(30% アルキル硫酸エステルナトリウム 脂肪酸アルカノールアミド)、酵素
・液 性:中性
・用 途:絹用
・使用量の目安:水2ℓに対して5ml(内キャップ一杯)
ソネット ウォッシュリキッド ウール・シルク用(おしゃれ着用液体洗剤 ラベンダー) 1L
・有機栽培のオリーブ油石けんをふんだんに使用。お洗濯物に油分をしっかり補給し、やわらかくしなやかに仕上げます。
・ウールやシルクなど大切でデリケートな衣類のお洗濯におすすめ。
・ドラム式洗濯機にも。
・有機ラベンダーエッセンシャルオイルのやすらぐ香り。
・すすぎの際にナチュラルランドリーリンスをご使用いただくと、よりふんわりした風合いをお楽しみいただけます。■商品全成分
水、脂肪酸カリウム*、アルキルグルコシド、エタノール、クエン酸カリウム、香料(ラベンダー*)、オロイド混合剤
おわりに
シルクのシミ抜き方法を見て「なんだかすごく面倒!」「こんなに気を使わないといけないの?」と思った人も居ることでしょう。シルクは蚕(かいこ)の吐く繭からできていますが、実はこの天然繊維のほとんどは私達の「髪」や「肌」と同じタンパク質(アミノ酸)で成り立っています。
しかもそのアミノ酸は私達の髪や肌よりもずっと作りが弱いものなんです。言うなれば「超敏感肌」のような繊維がシルクなんですね。熱いお湯を使ったり、強い洗剤を使ったりするとタンパク質が壊れてしまいます。
縮む恐れがあるだけでなく、せっかくのシルクの光沢感や風合いが無くなってしまうんですね。気軽に着られるシルク混紡のインナー類や靴下等であれば、シルクのシミ抜きをするのは割とカンタン。でも高級衣類の場合には、ほんの少しの変色や風合い変化等が一大事…ということになります。専門業者ですら、シルクの取扱にはとても気を遣うものなんです。
「うまくシルクのシミ抜きができるかな、心配…」と感じたら、無理せずクリーニング店に依頼をすることをおすすめします。