ハンコを押す時に使う「朱肉(しゅにく)」。ビジネスシーンや重要書類への捺印等、様々な場所で登場する文房具ですが、一度服につくととても取れにくいシミになることでも知られています。
お気に入りのシャツやハンカチ等に朱肉を付けてしまい「どうしよう!クリーニングしかない…?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。この朱肉のシミ、実は意外な落とし方できれいにできることもあるんです。
特別な洗剤や溶剤等を使わずに、家にあるもので朱肉のシミ抜きに挑戦してみましょう。今回は2つの朱肉のシミ抜き方法や注意点等について詳しくご紹介していきます。
朱肉のシミはなぜ落ちない?
そもそも朱肉のシミはなぜ、一般的な洗濯方法では落ちにくいのでしょうか。その理由としては、ほとんどの朱肉の「赤色」に使われているのが「顔料(がんりょう)」であるという点が挙げられます。
顔料とは色の原料のひとつです。天然の鉱石や金属を細かく砕いたものである「無機顔料」や、石油から合成した「有機顔料」、蛍光顔料等の「特殊顔料」があります。
「染料(せんりょう)」は紙や服の繊維に染み込むようにして色を付けますが、「顔料」は表面にしっかりとくっついて発色をさせるという特徴があります。また「石」や「金属」の粉なので、基本的に油にも水にも溶けません。
そのため「ハンコの色が半永久的に長持ちする」というのが顔料の利点なのですが、一度服に付いてしまうと「色が取れにくい」「分解しにくい」という特徴によってやっかいなシミになってしまいます。そのため「朱肉のシミ」には、一般的な「石けん」や「酸素系漂白剤」等ではシミ抜きの効果が得にくいのです。
クレンジングオイルで朱肉のシミ抜き!
上でご紹介したとおりかなり難しいシミである「朱肉のシミ」に使えるのが、メイク落としに使うクレンジングオイルです。
クレンジングオイルは朱肉と同じように「顔料」を使うマスカラやアイライナー等を浮かせる界面活性剤が多く含まれています。また練朱肉の油汚れを浮かせる性質を持っているのもポイントです。
用意するもの
・台所用液体洗剤
・古い歯ブラシ
・洗濯用洗剤
朱肉のシミ抜きの手順
- 服は乾いたままの状態でシミ抜きをスタートします。シミの部分に少量のクレンジングオイルを垂らします。
- ごく優しく揉むように洗うか、古い歯ブラシで軽く叩くように汚れを浮かせていきます。
- 汚れが浮いたら、歯ブラシに40℃程度のぬるま湯をつけてさらに叩き、シミ部分に水分を含ませます。<
- もう一度やさしく揉むように汚れを浮かせます。
- ぬるま湯でシミがあった部分を十分にすすぎます。
- 汚れが取れたら、台所用液体洗剤を少しシミの部分に付けます。
- 優しくつまむように洗って、オイルの成分を浮かせます。
- もう一度ぬるま湯でよくすすぎます。
- 洗濯用洗剤を使い、洗濯機洗いまたは手洗いで全体を洗って仕上げます。
注意点
※クレンジングオイルでの朱肉のシミ抜きでは、水によるすすぎが必要です。水洗いができない製品にはこの方法は使えません。
※衣類によってはオイル・洗剤の使用が向かないことがあります。目立たない箇所で事前にテストをすることをおすすめします。
※台所用洗剤・洗濯洗剤での仕上げ洗いが不足すると、油染みが残ることがありますのでご注意ください。
除光液(ネイルリムーバー)で朱肉のシミ抜き!
「クレンジングオイルでは朱肉のシミが落ちなかった…」こんな時の自宅シミ抜きの最後の手段とも言えるのが、除光液を使う方法です。
ネイル・マニキュアを落とすリムーバーである除光液には、エナメル塗料を溶かして落とすための強い成分が含まれています。朱肉の顔料を溶かす結果も期待できるというわけです。
用意するもの
・綿棒か古い歯ブラシ
・タオル(汚れても良いもの)
・コットンかガーゼ
・台所用洗剤
・洗濯用洗剤
朱肉のシミ抜きの手順
- シミがある部分の裏に古いタオルをあてておきます。
- 除光液を綿棒につけて、シミの部分を叩くようにして液を付けていきます。
- 汚れが浮いてきたらコットンかガーゼで軽く叩いて、浮いた汚れを吸い取ります。2)~3)を何度か繰り返します。
- 汚れがおおむね浮いたら、台所洗剤を少量付けて、古い歯ブラシで軽く叩くか手でもみほぐします。
- シミの部分に古い歯ブラシ等でぬるま湯を付けて、さらに汚れをもみほぐします。
- ぬるま湯でよくすすぎます。
- 洗濯用洗剤を使い、洗濯機洗いまたは手洗いで全体を洗って仕上げます。
注意点
※アセテート・トリアセテート繊維・アクリル・ポリエステルに除光液を使うと繊維が変質してしまいます。素材の表示を必ず確認しましょう。これらの化学繊維が使われている場合にはシミ抜きはできません。
※色柄物には原則として除光液は使用できません。
※服の素材・染色方法によっては、白色生地でも多大な変色等が起きる可能性があります。天然染色製品には除光液は使えません。またその他の衣類でも、必ず目立たない箇所で事前に変色・色落ちのテストを行ってください
※除光液は揮発性が高く、また引火の恐れがあります。作業中には必ず窓を開けて換気をしましょう。
※除光液でのシミ抜き後には水を使ったすすぎや洗剤での洗濯が必要です。水洗いができない製品にはこのシミ抜き方法は使えません。
家では落ちない朱肉のシミもある?
上記でご紹介したとおり、洋服に付いた朱肉のシミは除光液やクレンジングオイル等を使って少しずつ浮かせていくことができます。ただ、シミの状態によってはこれらを使ってもシミが取れないことも。事前にシミや服の状態をチェックしておきましょう。
古いシミはNG
自宅でケアができるシミは、基本的に付けたばかりのものです。朱肉等の顔料のシミは時間が経つほどに乾いて表面への付着力が強くなっていき、なかなか汚れが取れなくなっていきます。
シミの状態にもよりますが、原則として汚れを付けてから3日~一週間以上が経過した朱肉のシミは自宅での退所が難しいと考えておいた方が良いでしょう。
顔料の量が多いと汚れが広がる?
服についた少量の顔料であれば、クレンジングオイル等を使って浮かせながら少しずつ取り除くことが可能です。しかし朱肉の汚れが非常に多い場合、赤い顔料が浮いてきても取り除くことができず、かえって汚れを広げてしまうケースがあります。
- ハンコの円が全部見えるほどハッキリ押されている
- イタズラ等で何度もハンコが押されている
- ハンコではなく朱肉自体に服を触れさせてしまった
上記のような場合には、自宅での朱肉のシミ抜きでは赤い色素を取り除くのは難しい可能性が高いです。
生地に凹凸がある
ニット生地やカットソー生地等で生地表面の凹凸が大きなものだと、表面に付いている朱肉の顔料を自分でキレイに取り去るのが難しくなります。
衣類が上記のような状態であったり、自宅でのシミ抜きに不安がある場合には、無理をせずにクリーニングの専門店にシミ抜きの相談をしましょう。その際には、「ハンコの朱肉のシミである」ということを言い添えることも大切です。
おわりに
服に付いた朱肉のシミの落とし方・シミ抜き方法はいかがだったでしょうか。朱肉のシミは時間が経てば経つほど落ちにくくなり、最悪の場合にはクリーニング専門店でも落とせなくなってしまうことがあります。礼服やスーツ等、大切な洋服に朱肉のシミを付けてしまった時には、できるだけ早く専門店に衣類を持ちこむことをおすすめします。