ウールとは、羊毛(羊の毛)を撚って作った糸(毛糸)で作った素材のこと。空気をたっぷりと含むため温度を高く保つことができ、防寒性に優れているのが特徴です。ウール(羊毛)の服は、冬場には欠かせないアイテムですね。
でもウールのセーターや着物等にシミを作ってしまい、「しまった!」と頭を抱えたことがある…なんて人も多いのではないでしょうか?
ウールは汚れが付いた時のお手入れが難しい素材なので、シミ抜きの際には洗濯表示のチェック・正しい洗濯方法を知っておくことがとても重要になります。今回はウールのシミ抜き方法や注意点についてご紹介していきましょう。
ウールの服にシミができた時の3ステップ
ウールの服にシミを作った時には、慌ててシミ抜き作業に入る前に、まず以下のステップを行いましょう。
1.大元の汚れを取り、水分をできるだけ吸う
食べ物汚れ等で塊が残っている場合には、ティッシュ等でできるだけ取り除きます。その後、キレイなハンカチかガーゼ、タオルでシミ部分をポンポンと軽く叩くようにして、シミに含まれる水分を可能な限り吸い取りましょう。
ハンカチ・タオルが無い場合にはティッシュでもOKですが、毛羽立ちを起こしやすいので強く擦らないこと。常にハンカチ・タオルのキレイな面がシミに当たるようにします。
2.洗濯表示を確認する
応急処置を終えたら、即座に洗濯表示を確認しましょう。
ウールの服(もしくはウール混の毛の服)には、大きく分けて以下の3タイプがあります。
- 洗濯機で洗えるウール(旧表示では洗濯機マーク、新洗濯表示ではタライマークに40(水温)のマーク
- 手洗いで洗えるウール(旧表示ではタライ+手のマーク、新洗濯表示ではタライ+手洗いの文字付き)
- 自宅では洗えないウール、水洗い不可のウール(タライに×のマーク)
このうち、1.)と2.)の製品(ウォッシャブルウール)は、自宅でのシミ抜きが原則として可能です。
水洗い不可のウールは自分でのシミ抜きが行なえません。専門業者でのシミ抜き対応が必要になります。
3.シミ抜きを自宅で行うか業者に依頼するか決める
ウォッシャブルウールでも、以下のような場合には自宅でシミ抜きをしない方が良いことがあります。
2)人体用ハンガー・平置きハンガー(セーター干し専用ネット等)の用意が無い
3)シミ範囲が非常に大きい(手のひら以上ある)
4)インク・クレヨン等の顔料・染料系のシミである
上記のような場合、自宅でのシミ抜きではシミが全部落ちないか、シミ抜き+水洗いで型崩れが起こる可能性があります。無理に自宅でのシミ抜きをせず、速やかにクリーニング店に依頼をすることをおすすめします。
自分で行うシミ抜き方法
ウール(羊毛)は水洗いに対応する場合(ウォッシャブルウール)でも、素材の縮みが起こりやすいのが特徴です。そのためシミ抜きの際には縮みや風合いの劣化をできるだけ防ぐため、洗濯用の中性洗剤を使用します。
用意するもの
・タオル3枚
・洗面器等の容器
シミ抜きの手順
- シミがある部分の裏側にタオルをあてておきます。
- 中性洗剤をシミ部分の上から垂らします。
- もう一枚のタオル(もしくはガーゼ)で、ごく軽くポンポンと叩いていきます。
- 更にもう一枚のキレイなタオルで軽く叩き、浮いてきた汚れをタオルに移し取ります。
- 水でシミ部分を軽くすすぎます。シミが脂汚れの場合には、30℃前後のぬるま湯を使ってもOKです。
- 汚れが取れていない場合には、もう一度だけ2)~5)を繰り返します。
- 洗面器等に水を張って中性洗剤を適量薄め、全体を手洗いして仕上げます。
- 手早くすすぎを行います。
- 軽く脱水して平干し、もしくは人体ハンガー等で陰干しを行います。
※ウールは摩擦に非常に弱いので、ガーゼやタオルで強く擦らないようにしましょう。
※漂白剤入り・蛍光剤入りの洗濯洗剤は使用しないでください。
※酸素系漂白剤も使用を控えましょう。
※40℃以上の熱いお湯を使うと縮みの原因になります。
※水に長く漬けると縮みの原因になります。作業はできるだけ手早く行いましょう。
※2回中性洗剤を付けてシミが取れない場合、それ以上シミ抜きを続行すると衣類を傷めてしまいます。全体洗いをして終了し、早めにクリーニング店に依頼をしましょう。
なぜ「洗えるウール・洗えないウール」があるの?
同じウールなのに、手洗いができないものがあるなんて…と、不満に思われている方も多いのではないでしょうか。普段遣いのニットは「洗濯機洗いOK」なのに、オシャレ着用のニットは「手洗いもNG」…これって不思議ですよね。
実はウールは元々は、基本的には全部が「水洗い不可」のものでした。羊の毛は当然のことながら「動物性繊維」なわけですが、この動物繊維の表面には「スケール」という魚のウロコのような部分があります。
通常の洗濯で水を含むと、ピッタリと仕舞っていたウロコ(スケール)が開きだして、更に摩擦で固まり、フェルトのようにモコモコ・カチカチになってしまうんです。これがウールの「縮み」を作るわけですね。
手洗いができる「ウォッシャブルウール」は、この多大な収縮という問題を以下のいずれかの方法で解決したものです。
2)ウールの防縮加工として、糸(繊維)の状態でスケールを取り除く。
3)ウールの防縮加工として、繊維をごく薄いフィルム等で包み、スケールが開かないようにする。
上記のような新たな技術によって、ご自宅でもウールの洗濯やシミ抜きができるようになったんですね。ただ、ウォッシャブルウールも万能というわけではありません。ウール製品はその多くが、糸を編み込んだニット素材です。
そのため洗濯によって縮みやすいだけでなく、水分を含んだことで伸びてしまったり、型崩れを起こしやすいという弱点を持っています。また何度も洗濯を重ねることで防縮加工が弱まり、縮みが起きることもあります。
・シミ抜き・選択後には丁寧に形を整える
・必ず平干し等にして、型崩れや伸びを防ぐ
ウォッシャブルウール製品のシミ抜きの際には上記の点に気を配り、衣類をダメにしてしまわないように気をつけましょう。
おわりに
ウール製品の縮み方はかなり激しいものです。誤った洗剤・お湯の温度の使用等によって、ニットの大きさが洗濯前の半分以下に縮んでしまった…といったケースはけして珍しいものではありません。
洗剤や漂白剤・お湯の温度等によって一度かたく収縮してしまったウールは、残念ながら専門業者でも元の状態に戻すことができません。高級衣類や着物等、万一収縮をしては絶対に困る!という衣類については、無理に自宅でシミ抜きをせずに専門業者に早めに相談をしましょう。